避妊に失敗しないようにするためにも避妊薬、いわゆるピルを試してみたいと思う女性が、最近多くなっています。
副作用が気になっていたり、具体的な効果を分かっていなかったり、使い方がよく分からないということで、日本ではピルの服用があまり普及していないようです。
ピルを使った上での、避妊以外のメリットやデメリットの知識を理解してしっかり身につけることで、安心して使うことができ、避妊にも成功する確率が格段と上がりますピルを飲む様子

ピルは避妊目的以外にも、月経の不調やホルモンバランスの調整がうまくいかない時に起こる肌荒れといった女性特有の困った症状を改善させることができる薬です。
経口避妊薬という名前に惑わされず、ピルによる女性の体へのさまざまなメリット、そしてデメリットも知っておきましょう。

ピルは女性の身体にどのように作用している?

女性の体ピルの作用についてお話する時には、女性ホルモンについての説明が欠かせません。
エストロゲン(卵胞ホルモン)プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンがありますが、エストロゲンは排卵を促し、プロゲステロンは妊娠を維持するという作用を持っています。
これら2大女性ホルモンは、初潮を迎える準備が整い、そこから閉経となるまでの長い期間、子孫を残すための準備として女性の体の中でめまぐるしく入れ替わり分泌されます。

子宮内膜を厚くしてベッドを整え、卵胞を成熟させて排卵へ導くエストロゲンの分泌は、受精卵の子宮内膜着床成功を境にして、妊娠維持作用を持つプロゲステロン分泌へとバトンタッチします。
両者ともに分泌は続きますが、その量の比率が大きく変化します。
ここで受精と着床が失敗した場合には、ベッドが不要となるため、子宮内膜が少しずつ剥がれていき経血という形で体外へ排出されることになります。
これが月経です。

排卵までの卵胞期14日・排卵から月経までの黄体期14日、というおおよそ28日間の周期で月経が繰り返しつづいていきます。
ピルにはこの二つの女性ホルモンが同時に存在していて、服用することにより女性ホルモンを調整して排卵を抑制する作用があります。
具体的には、ピルによってホルモンが分泌された(妊娠した)と脳が勘違いすることで、それ以上の女性ホルモンの分泌が抑制されて排卵が起こらなくなります。
そのため、避妊効果が高くなるという結果になります。

具体的な避妊効果

ピルによる避妊効果は、排卵抑制だけでなく、子宮内膜が厚くならないために受精卵が着床しにくいことや、子宮頸管粘液を変化させて精子の進入を邪魔する、といったことなどもあわせて作用することでもたらされます。
これらの相乗作用により避妊の成功率が高くなるという仕組みになっています。
排卵はされませんが脳は充分なホルモン量により妊娠していると勘違いして、結局は受精卵の存在がないことに気が付き、月経となります。

日本では1999年に避妊目的で認可された低用量ピルですが、子宮内膜を厚くする機能がありません。
国内では海外と比べて普及率が低いですが、中でもトリキュラーは人気の高い低用量ピルとして日本で一番使われています。
トリキュラーを含む、低用量のものは月経初日から21日間、同じ時間に服用し、7日間の休息期間で子宮内膜が更新されて月経がやってきます。
この子宮内膜の薄さが、月経時の経血量を減らすことになるので、貧血が緩和されることに繋がります。
基本的には4週間で1サイクルとなっていますので、3週間服用して1週間休息するというサイクルを繰り返して、毎月の排卵と妊娠を防ぐことになります。

避妊に失敗しないようにするためにピルを服用する場合には、まず血液検査で女性ホルモン量を計測することになります。
これは、その量が人それぞれで異なるため、避妊を成功させるための排卵抑制となるように、その人のホルモン分泌量に合わせて種類を選ぶということです。
卵胞ホルモンであるエストロゲン分泌が少ないけれども黄体ホルモンであるプロゲステロン分泌は多い人、その逆パターンの人、どちらも少ない人など、さまざまです。

ピルの種類

ピルの種類のイメージピルの種類には、2つの女性ホルモンの割合の違いだけでなく、ホルモン量自体も異なったものがあります。
超低量のものから、低用量、中用量、高用量など、使用目的・服用する人の体質に合わせて選ぶことになります。
避妊目的では現在の経口避妊薬として主流となっている低用量ピルが処方されます。
これはエストロゲン量が30~40μgとなっていて、50μg未満のものが多く、シート単位での処方となります。
実際服用するのは21錠ですが、飲み忘れ予防に28錠単位でもらうことが多いです。

中用量高用量のものではエストロゲン量がより必要な場合に処方されますが、服用期間が長期となる場合には体への負担を考えて低用量ピルが処方されるケースが多いです。
このように女性ホルモンを補うことで排卵を抑制して避妊を高い確率で成功に導くのがピルという薬です。

ピルが身体に引き起こす副作用とは?

日本においてのピルは、処方箋が必要となる薬です。
どんな薬にも多少なりとも副作用が存在し、ピルも例外ではないということを認識しておきましょう。
中でも低用量ピルは副作用が抑えられているため、中用量や高用量、アフターピルなどに比べて副作用は多くありません。
とは言ってもホルモンを含んだ薬ですので、服用することにより体内の2つの女性ホルモン分泌バランスが、一時的とはいえ変わります。
そうなると、副作用が起こることもあります

ピル服用での副作用には、うつ、頭痛、吐き気、倦怠感、胸の張り・痛み、不正出血、眠気、体重増加、静脈血栓症などがあることが分かっています。
「うつ」は、体内の自然なホルモン環境が人工的に崩されることでバランスを取れなくなるからだと言われています。

頭痛、吐き気、倦怠感

頭痛、吐き気、倦怠感」は、ピル服用で一番多いとされる副作用です。
ピル服用による一時的なホルモン量変化によるものということで、飲み続けて体が慣れてくるとおおよその場合には改善されていきます。
我慢できないほどの激しい頭痛や倦怠感、本当に吐いてしまったりという状態になった場合には、無理をせずに病院を受診しましょう。

胸の張り、痛み

胸の張り、痛み」は、月経前症候群であるPMSで起こる症状と同じと考えられます。
脳では妊娠していると勘違いしていますので、乳房が張りやすくなります。
ピルを飲み続けていくうちに気にならなくなっていくことがほとんどです。
同じ状態が続き、気になる場合には、病院を受診して相談し、ピルの種類を変更してもらうことで症状が改善されることも多いです。
もししこりを伴う張りの場合には、乳がん検診を受けることをおすすめします。

不正出血

不正出血」は、ピルの飲み忘れ・相互作用を持つ薬との併用で起こると言われる副作用です。
これは、ピル服用によってホルモンの血中濃度が一時的に下がることが引き起こすものとされています。
飲み忘れずにきちんと飲んでいても不正出血が起こることもありますが、婦人科系の定期健診にて異常がない限りはピルの服用は続けることができますし、心配はありません。
できればピルを服用する前に、婦人科検診を受けておくと良いでしょう。

その他副作用

ピルの副作用でまれに「眠気」を感じることもあります。
妊娠している状態と考えれば、頷ける症状です。
飲み続けるうちに体が慣れてきて、改善もしていくことがほとんどです。
もし日常生活が不便になるほどの眠気が起こるようであれば、ピルを飲む時間を毎夜の就寝前に設定すると良いでしょう。

ピルは「むくみ」を引き起こすことがありますので、それが体重増加となって表れる場合があります。
実際に脂肪量が増えてしまう、ということではないということです。
ひどいむくみ症状が出た場合には、ピルの種類の変更、むくみに効果のある漢方薬を併用することで改善していきます。
但し、ピルにより食欲が増進する場合があるので、食べ過ぎに注意し、食生活や食の好みも意識し、時には見直したりしましょう。

静脈血栓症」は、ピルの血液凝固作用により引き起こされる可能性がある副作用です。
この特徴により、35歳以上の喫煙者、喫煙者で15本以上/1日の人、高血圧の人、重度偏頭痛持ちの人、以前に静脈血栓症の経験者、妊娠中、授乳中、がんを患っている人、他の疾病で重度の人、など、当てはまる人はピルの服用ができません。

初めての服用では、おおよそ2~3日目ほどで副作用が落ち着いてくる場合もあれば、1シート服用が完了して2シート目に入った頃に副作用がおさまってくるというケースもあります。
どんな場合でも、ピルを飲み続けるうちにこれらの副作用は改善し、なくなっていくことがほとんどだと言われています。
病院でのピル処方が初診では1シート、次回にまた1シートというケースが多いのは、体調変化や副作用を観察するためです。
自分に合ったものを医師と相談しながら選んでいきましょう。

避妊目的外のピル

ピルには避妊目的以外にも用いられることがあります。
それは、月経不順や月経異常改善のために用いられるピルです。
特に更年期に入るとこのような症状に見舞われることが多く、ピルに含まれる女性ホルモンを用いたホルモン療法が対処法として存在します。
その際に使われるのがプロギノバやプレマリンといったホルモン剤です。
ピルとしての避妊効果もありますが、本来の目的としては更年期障害の治療目的に使われます。

ピルを利用している日本人女性が少ない理由

ピルは正しい服用をすれば避妊効果が99.9%という成功率の高い経口避妊薬です。
その中でもホルモン量の少ない「超低用量」「低用量」のピルは副作用も少なく、さまざまある避妊法の中でも安全なものとして、世界中では非常に多くの女性達に利用されています
それに対して日本での普及率はまだ低く、仕組みやメリット・デメリットが正しく理解されていないのが事実です。
ピルに関する基礎知識と共に正しい情報を身につけて、疑問や不安、誤解を解消していくことが、第一歩となります。

ピルは、自分が飲み忘れたりすることがない限り、他の避妊法と比較しても確実な自己防衛法と言えます。
欧米では低用量ピルが避妊法の主流となっていて、フランスでは普及率41%、ドイツ37%、イギリス28%、アメリカでは16%となっています。
日本ではそれがたったの1%という驚くべき低さです。
これにはいくつかの理由があります。

性教育の違いにピル利用に差がある

まずは欧米と日本での「性教育の差」があげられます。
欧米では幼少の頃よりしっかりとした性教育が行われていて、避妊具の使い方も学校で教えてくれます。
ピルや避妊具はドラッグストアで購入ができるようになっています。
他の避妊具は中学校や高校、大学のキャンパス内にピルの自動販売機を設置している国もあります
それに対して日本では、特にピルの入手は、医師の処方箋が必要となっています。
性に関する基礎知識と、避妊薬や避妊具の購入のしがたさが、高いハードルとなっています。

ピルの販売時期が遅かったため普及していない

日本でのピルの解禁時期が先進国の中で一番遅かったということも、日本人女性での普及率が低い理由の一つです。
日本での低用量ピル認可は1999年で、世界でも一番最初に認可されたアメリカでは、これよりも25年も前となっています。
また、性教育の遅さからピルに関する正しい知識を持っている人が少なく、誤解や不安を持っている人が多いです。
一言で言えば、低用量のものは副作用もかなり少ないです。

避妊意識の差も影響している

女性が自ら積極的に避妊を行うかどうかという意識が、欧米諸国と日本とでは違うということもあげられます。
それぞれのお国柄や文化の違いがその原点となっているわけですが、欧米では自分の意見をはっきり言うことが当たり前となっているのに対して、日本女性は奥ゆかしい人が多いです。
自主性の高い欧米の女性においては、避妊薬を持って自ら自分を守る、避妊に失敗しない策を自ら施している、ということになります。
日本の女性では、避妊を男性まかせにしていることも多いです。

ピルについての知識不足

日本ではピルを服用することでの副作用が強調されすぎているといえます。
不正出血や吐き気などのマイナートラブルは、実際には頻度はそれほど高くありません。
これらの症状に不安を覚えて服用を途中で中止する人も多いため、医療機関での処方に際する事前のしっかりとした情報提供が絶対に必要であると言えます。
副作用だけでなく、副効用もたくさんありますので、それも含めて自分でも正しい情報の収集をすることが大切です。

最近の若者の間での活字離れや、雑誌編集者などのこの種のテーマを受け持つ中高年男性における避妊への興味が薄れている、といったことも、ピルに関する知識の少なさの理由としてあげられます。
医療関係者のみならずマスコミ関係者の間でも、ピルに関する副作用だけでなく、正しい知識や避妊の確実性、利便性、副効用、など必要な情報の提供が必要です。
そうすることで、女性だけでなくパートナーの男性も正しい知識を受けることができます。

これらの意識の問題が、日本人女性の間でのピル普及率の低さと大きく関与していますので、まだ時間はかかるかもしれませんが少しずつ普及することが望まれます。
避妊のみならず、女性のみに見られる特有の症状改善にも効果を発揮しますので、元々利用している人もいるのは事実です。
誤解を解いて、正しく利用することで避妊の失敗を防ぎ、不快症状の改善に役立てましょう

皆さんは正しい避妊の知識はありますか?避妊方法は複数あり、避妊方法の数だけ、メリットやデメリット、リスクなどがあります。今回はピルに関する避妊方法を中心に、様々な視点から避妊について考えてみたいと思います。